
コスタリカと言われても「ん?どこ?」という感じの人が多いのではないでしょうか。何となく暖かい地域な感じが名前から漂っていますが、よく分からないという人が大半だと思います。
すごいマニアックなのですが、僕は小学校の時に国語の教科書で「コスタリカのボガラ鉱山」に関するお話があって、内容は覚えてないですけど、コスタリカといったら何故かいつもボガラ鉱山を想像してしまいます(笑)
実際のコスタリカはコーヒー豆の大きな生産地の1つであり、アラビカ種(高級なコーヒー豆)のみ栽培が許可されていて、他の種類の低品質なコーヒー豆の栽培は法律で禁止されているというユニークな国です。そんなコスタリカ産のコーヒー豆について見ていこうと思います。
目次
1). コスタリカとはどんな国なのか 2). コスタリカ産コーヒー豆の栽培方法 3). コーヒー豆の品質を向上させるコスタリカの体制 4). コスタリカコーヒーの歴史 5). コスタリカコーヒーの味 6). 「コーラルマウンテン」などコスタリカコーヒー豆の種類コスタリカとはどんな国なのか
コスタリカは中央アメリカに位置していて、メキシコの少し下あたりにある小さな国です。国土は5万㎢と北海道の半分以下の面積になっています。人口も450万人くらいしかおらず、日本と比べると大きさも人口も少ない小国です。 もともとスペインの植民地支配を受けていた影響で、みんなスペイン語を話します。ちなみに「コスタリカ」という名前は、スペイン語で「豊かな海岸」という意味であり、大航海時代にコスタリカに上陸したスペイン人が、金の装飾をしている現地人を見て、その豊かさに驚いてつけた名前だそうです。 コスタリカは太平洋とカリブ海に面しており、コスタリカの国土を横断する火山帯が標高差のある変化のある地形を作っています。また、国内に30を超える国立公園を有しており、森林地帯が国土の40%以上と、コーヒーを栽培するのに最適な環境となっています。コスタリカ産コーヒー豆の栽培方法
(1) コスタリカ産のコーヒー豆は高い標高で栽培される
コスタリカは熱帯地域でありながら、標高の高い山岳地帯なので、コーヒー豆を栽培するのに最適な環境であると言えます。コスタリカ産のコーヒー豆の75%が標高1,000m〜1,700mのところで栽培されています。 そのために昼と夜の温度差が激しくなり、昼間は気温が高く、夜間から夜明けにかけては気温が低くなります。コーヒーを栽培する上でこの温度差は、より引き締まったコーヒー豆を作ることができるようになるので重要です。実際にコスタリカ産のコーヒー豆の栽培地域の気温は、17度〜23度の間であると言われています。(2) 安定した日照量とはっきりした雨季と乾季がコスタリカ産コーヒーを支える
コスタリカはもともとが赤道のほぼ真下の熱帯地域なので安定した日照量があります。ただし、太陽光は有れば有るほど良いというわけでもありません。そのためにコスタリカでは「シェイドツリー」を活用しています。 シェイドツリーとはその名の通り、日光を遮って日陰を作るための木です。このシェイドツリーをコスタリカではコーヒー豆の木の横に植えることで、必要以上な太陽の光を抑えることができます。このシェイドツリーは日照量をコントロールするだけではなく、土壌の新色を防いだり、枯葉や枯枝が天然の有機物になったりと、コスタリカのエコシステムを支えています。 また降水量に関しても、コスタリカにははっきりとした雨季と乾季が存在しており、コーヒー豆を栽培するのに適した気候となっております。

(3) コスタリカの火山灰性の肥沃な土壌で美味しいコーヒーができる
コスタリカの山岳地帯では、火山灰による豊かな土壌により高品質なコーヒーの栽培が可能となっております。このためにミネラルが豊富な土壌となり、コーヒーを栽培するのに最適な栄養分を吸収することができます。 また、火山灰性の土壌は保水力があり酸素供給を助けるという点においても、コスタリカ産のコーヒーを栽培するための基盤となっております。 これらの気候条件の下に、3月〜4月の雨季にコーヒー豆の木は白く綺麗な花を咲かせて、6月頃にはコーヒーチェーリーができ、12月になるとコーヒーチェーリーが赤く成熟していきます。コーヒー豆の品質を向上させるコスタリカの体制
コスタリカでコーヒー豆を栽培している主要な地域はタラス、トレスリオス、セントラルバレー、ウェストバレー、オロシ、ブルンカ、トゥリアルバの7つのエリアになっています。それぞれ微妙に異なった気候や地形の条件があり、コーヒー豆の味にバラエティをもたらしています。 これらの地域を全部合わせたコスタリカ全体で採れるコーヒー豆の生産量は7万6,000トンに上ると言われています。世界のコーヒー豆生産量のランキングでもいつも10位〜20位の間には入っています。(1) コスタリカコーヒーは小規模農家によって栽培されている
コスタリカでコーヒー豆の生産に携わっている農家は8万件を超えるとも言われています。人口が450万人であることを考えると、かなりの割合の人たちがコーヒーに携わっています。 そしてその8万件のうち90%小規模農家です。小規模農家が多いと、1人あたりの生産者が手がけるコーヒー農園の大きさは自ずと小さくなっていきます。そのために、コーヒー1粒1粒にかける手間がより大きくなっていき、美味しいコーヒーの実現につながります。 小規模農家で行なわれているコーヒー豆の収穫方法は、農家があまりにも急な斜面にあるために、コーヒー農家は体にロープを巻きつけて収穫します。なので現地では「モンキースタイル」などと表現されます。このモンキースタイルで、腰につけたバスケットが一杯になるまで手摘みで丁寧にコーヒー豆が採られていきます。 しかし、どうしても小規模農家はコーヒーの生産者としての立場が弱くなってしまう傾向にあります。そのために、コスタリカでは国をあげて小規模農家を守るべく国内の生産体制を整えています。(2) CICAFE(国立コーヒー協会研究所)
コスタリカのコーヒー生産者を国全体で支えていくために作られたのが、このCICAFE(国立コーヒー協会研究所)でした。主な事業内容としては、生産者への技術的な指導を行っています。コーヒー農家の生産技術を向上させることがコスタリカ全体のコーヒー豆の品質向上につながっています。 また、環境保護に関する取り組みも強化しています。持続可能にコーヒー豆を生産していくためには、環境を無視したコーヒー豆の栽培をしてはいけません。実際にコスタリカでは1900年代にコーヒー豆の栽培に伴う環境破壊が問題となっていました。このままでは、中長期的な視点でコーヒーを栽培していくことができないと判断したコスタリカ政府は、CICAFE(国立コーヒー協会研究所)を使って、コーヒー豆の洗浄用の水の使用量を制限したり、排水物のろ過装置の設置をしたりしました。 生産性の向上と環境保護という両立することが難しい2つの課題に取り組んでいるCICAFE(国立コーヒー協会研究所)はコスタリカのコーヒーを陰で支えているのです。
(3) コスタリカではアラビカ種のコーヒー以外は栽培禁止
コスタリカのコーヒーの生産体制を見る上で、最も特徴的なのが、アラビカ種以外のコーヒー豆の栽培を禁止していることです。アラビア種はコーヒー豆の中でも品質が高くて高級なコーヒー豆の種類です。 1988年の行政令でアラビカ種以外のコーヒー豆の生産を禁止しました。アラビカ種以外のコーヒー豆を国で禁止するというのは前代未聞であり、世界中を探してもコスタリカでしか行われておりません。 この法律からも、国をあげてコーヒー豆の品質を維持して、最高級のコーヒー豆のみを世界に輸出していこうという意気込みが感じられます。コーヒー豆を栽培するのに最適な環境と、それを国でサポートするという両輪でコスタリカのコーヒー豆は栽培されています。コスタリカコーヒーの歴史
(1) コスタリカのコーヒー栽培は近代に始まった
コスタリカコーヒーの歴史は近代になってからやっと始まりました。最初のコーヒーは1729年に隣国のキューバから持ち込まれ、それをもとにコスタリカでもコーヒー豆の栽培が始まっていきました。 1800年代には輸出もされるようになっていき、1870年代にはコーヒー豆の輸出は急拡大し、コスタリカの国を支える重要な農産物となりました。その後、1933年に先ほど説明したコスタリカのコーヒー協会であるCICAFEが設立され、生産から輸出に至るあらゆるプロセスで品質の向上が行われました。(2) マイクロミル革命
近代になって始まったコスタリカでのコーヒー豆栽培ですが、最近になって更に大きな変革が行われました。それは「マイクロミル革命」と呼ばれています。 一般的に、コスタリカではコーヒー農家は農協や集荷業者にコーヒーチェリーを販売することで生計を立てています。そして農協や集荷業者は、たくさんのコーヒー農家から集めたコーヒーチェリーを巨大なミルに入れて水洗処理を行います。コーヒー農家にとって、自分でコーヒー豆を加工する必要がないので簡単ではあるのですが、その分のマージンを業者に取られてしまうので、どうしても手取りのお金が少なくなってしまいます。 このような状況を解決するために「マイクロミル革命」が行われ、コーヒー農家自身で身内や近隣のグループで集まって、小さいミルを作って水洗処理まで自分たちで行い、できるだけ多くのお金を手取りでもらおうという運動が起きています。 2000年代に入ってから行われているこの運動は、コーヒー農家の生計をより良くするための方法として注目を集めています。
コスタリカコーヒーの味
コスタリカ産のコーヒー豆の味は、酸味が豊かで苦味は控えめであり、軽くて飲みやすいという印象があります。芳香な香りの中に、深めのコクがあり絶妙なバランスを保っています。 とても上品な味だなと個人的には感じており、コーヒーを飲んだ後にほんのりするフルーティーな香りが気持ちをリラックスさせます。「コーラルマウンテン」などコスタリカコーヒー豆の種類
コスタリカ産のコーヒー豆はアラビカ種以外の栽培が禁止されているので、全てがアラビカ種の高級コーヒー豆となっております。そのうち90%以上が、高地で栽培されるかトゥーラ種か低地で栽培されるカトゥアイ種になります。 コーヒー豆の等級は、栽培されている標高に応じて6つに格付けされており、標高が高いほどより高級なコーヒー豆となります。具体的には、標高1,200m〜1,600mがSHQというランク、標高1,000m〜1,200mがGHQというランク、次いでHB、MHB、HGA、MGAと続いていきます。 コスタリカ産のコーヒー豆はそのまま「コスタリカ」のブランドで輸入されることが多いですが、「コーラルマウンテン」と言われるサン・ホセ西部の山岳地帯の限定農園で栽培されているコーヒーは、苦味が少なく、甘味とコクのあるまろやかな味わいが人気です。他にも「コスタリカ・カフェ・ボニータ」などがあります。